浅草橋にあるシェアオフィス「Un.C. -Under Construction-」。
REWORKをはじめるきっかけにもなったこのオフィスは新しい働き方を試すいわば実験場だ。この連載コラムでは、Un.C.を運営する中で発見したこれからのオフィス環境の可能性をレポート。前回までのUn.C.の計画から完成までに引き続き、今回はそのサイドストーリー的な位置付けとなる「THROWBACK」プロジェクトについてを紹介。
Un.C.の計画を進めている期間に、株式会社ナカダイという企業との出会いがあった。ナカダイは、前橋に工場を持つ産業廃棄物処理会社。リサイクル率99%を実現し、廃棄物のライブラリなどを作りワークショップを開催するなど、とても先進的な考えのもとで産業廃棄に取り組んでいる魅力的な企業だった。
そして、工場を見学した際に見た山のような廃棄物から、新しい可能性を感じて企画を考えた。それが「THROWBACK」だ。その意味は「投げ返すこと」。つまり、一度棄てられたモノをもう一度社会に投げ返したいという思いからこのプロジェクトはスタートした。
このプロジェクトの目的は、産業廃棄物を素材としてプロダクト化し、商品化することだ。とはいえ、はじめての試みであり、すんなりうまくいくとも思えない。いくつか試作をつくりながらその可能性を検証する必要があった。そこで、Un.C.の計画と結びつくこととなる。
ちょうど共用スペースのデザインを検討していたころと重なったこともあり、Un.C.でTHROWBACKの実験を行うことを考えたのだ。つまり、共用スペースの家具を産業廃棄物でつくってしまおう、ということ。それがUn.C.が完成する約1年前のことだ。それからは、定期的に工場を訪れ、さまざまな産業廃棄物を物色しながらアイディアを考え、実際に制作を進めていった。つくるものによって、知り合いの職人さんにお願いしたり、ときには自分で手を動かしてつくったり。ゼロから何かをつくるのとは違い、既にあるモノを相手につくっていくことはそれなりに難しく、試行錯誤を重ねながらプロトタイプの制作を行った。
こうしてできた約30種類ものプロトタイプが、Un.C.に並んだ。
それにより、THROWBACKプロジェクトの可能性と世界観が垣間見えたこともあり、2017年6月に、Un.C.および同ビルの別フロアを利用してローンチイベントを行うこととなった。タイトルは、「産廃からはじまる想像/想像展」。
まだ空き物件だったフロアに並べられた産業廃棄物そのものと、出来上がったプロトタイプを対比しながら見ることができる展覧会だ。産業廃棄物には、普段あまり見ることのない特定用途の製品や、工場で排出される端材、輸送用の資材などさまざまモノが存在する。それらを廃棄物ではなく、素材として改めて見てみると何か新しいモノが生まれる予感がある。
この展示では、それを体験してもらい、THROWBACKプロジェクトの可能性を感じてもらうことを目指した。会期中は、トークイベントなども開催し、多くの方に関心を持っていただくことができた。
このTHROWBACKの家具は、それぞれストーリーを持っている。
例えば、少子化によって学校が統廃合された結果棄てられた跳び箱であったり、LEDの普及に伴って旧規格の照明器具が大量に棄てられることになったりと、社会情勢と密接に関わった理由で廃棄されているのだ。そうしたストーリーがあることこそが、このプロダクトの価値であると感じている。実際、Un.C.に訪れた方は、そのストーリーを話すことから会話がはじまることが多い。不思議な見た目とそれにまつわる物語がセットになったTHROWBACKのプロダクトは、コミュニケーションを生むきっかけとして大きな効果をあげてくれているのだ。
このUn.C.の計画から生まれたTHROWBACKプロジェクト。現在も製品化に向けて試作などを重ね、少しづつ前進している。