REWORK

新しい働き方 / 営み方を実践するメディア

新しい働き方、それは仕事と人、時間や場所をつなげること。

「生きるように働く人の仕事探し」をコンセプトにした求人サイト、「日本仕事百貨」代表のナカムラケンタさん。現在は、リアルな場所として、清澄白河にカフェとイベントスペース、ギャラリーとオフィスが一体になった「リトルトーキョー」を運営している。キーワードは「つながり」だと話すナカムラさんに、今の時代に求められている新しい働き方についてうかがった。

日本仕事百貨 代表のナカムラケンタさん。

火花が散るような、仕事との出会いをつくる。

「仕事を分解していくと、一番表面に、募集要項に書いてあるような業種とか職種とか福利厚生とかいったものがあります。その下に日々の作業があったり、どんな人と働くかがあったり。もっと下には、もはや言語化できない領域があるんです」

今までの求人サイトは、その“表面”しか伝えられていなかった、とナカムラさん。日本仕事百貨がスタートして、今年で10年目。現在までに2000件以上の求人があり、サイト経由で転職・就職した人は3000人を超える。

「取材をして出てくる言葉を一本の葉っぱとすると、葉っぱが幹になり、最終的に根っ子につながる部分がある。それを伝えると、ある人にとっては衝動が沸き起こる。日本仕事百貨というのは、その“根っ子”を伝えるためのメディアです。根っことは何かといえば、生き方だと思っています」」

求人サイト「日本仕事百貨」のコンセプトは「生きるように働く人の仕事探し」。

給与や勤務地といった条件だけでなく、職場職場を訪ねて取材をして、その会社のいいところも悪いところも大変なところも隠さず紹介する。そのため、入社してからギャップが少なく、何度も依頼してくれるクライアントが多いそう。

「たとえば、リノベーションや建築設計をしているブルースタジオさんを取材をしたときに感じたのは『すべて自分でできる』ということ。普通、建築の仕事は、デザインとか設計といったプロジェクトの一部を担当するのが普通。でも、建築も不動産も広報もできる。「全部やらないといけないの?」と思ってしまう人もいるけれど、一方で「全部できるの? うれしい!」って思う人にとっては、まさに火花が散るような出会いにつながるかもしれない」

清澄白河にある「リトルトーキョー」。いろんな生き方・働き方に出会うための場所。

人と仕事をうまく結びつけられれば、いい場所が生まれる。

日本仕事百貨がスタートするきっかけは、ナカムラさんがサラリーマン時代に、週6日間通い詰めていたバーにあった。

「週6日も通いたくなるって、すごい場所なんじゃないか、って思ったんです。たしかに食事やお酒もおいしいし、内装もいい。でも、それが決定打ではない。何だろうと考えたら『人』。バーテンダーとか常連さんが、その場所のよさをつくっていると気づきました」

もともと建築の世界を目指し、「場所をつくりたい」と思っていたが「でも、誰かの場所をつくることには興味がなかった」というナカムラさん。人と仕事をすれ違いなく結び付けられれば、生き生きと働くことができるし、いい場所が生まれるのではないか。そんな仮説をもとに、日本仕事百貨は誕生した。

その後、2013年には、虎ノ門にお寿司屋さんをリノベーションしたカフェ兼イベントスペース「リトルトーキョー」をオープンし、さまざまな生き方・働き方と出会うイベント「しごとバー」をスタートした。

「衝動の伝播って、書籍を読んだりトークショーに行ったり、そういう受け身の状態よりも、直接会話をしているときに起きやすい。僕自身、仕事百貨を思いついたのはバーですし、バーが好きだし、自分の場所もほしい。そんないろんな思いが重なって」

「雑草ナイト」「図書館司書ナイト」など、個性的なバーテンダーによるディープな夜。
雑誌『ソトコト』の特集と連動した「人が集まる場所ナイト」。
限定30食、なんと昆虫料理プレートが味わえる「昆虫食ナイト」。

役割はバーのマスターではなく、スナックのママ!?

「しごとバーを一言でいうと『合同説明会』のようなもの。今までの説明会って、お互いの本当の部分までたどり着けない形式。ふだん着ないスーツを来て、面接では上っ面の会話をして……。なにより、『私は採用される側です』って名乗りをあげている状況もつらい」

「しごとバー」は、いろいろな生き方・働き方をしている人を1日バーテンダーとして招き、ただ一緒に飲むというイベント。これまでに1000回ほど開催され、毎回20〜30人が集まる。事前予約は不要で、お酒を一杯頼んでもらえればOK。

「合同説明会といっても、リクルートしたり、転職をすすめるイベントではなくて、面白そうならやるというのがスタンス。たとえば、雑草を研究している人と熱く語り合う「雑草ナイト」。世の中には、いろんな仕事があるっていうのを知ってもらうことで可能性が広がるし、単純に楽しいですし」

提供する側、される側という関係ではなく、お客さんがゲストになることも頻発する。第1回のしごとバーにお客さんとして参加し、その後独立して、バーテンとして舞い戻ってきた人もいるそう。

「同じゲストに興味を持ってきているので、だいたい仲良くなれます。そもそも、やたらめったらつなげるのもよくないし、名刺交換すればいいってもんじゃない。だから僕は、お客さんの話を聞いて、あの人に合いそうと思ったら動く。バーというか、スナックのママに近いですね(笑)」

人が自然とつながる空間をつくるには「カウンターは必須」だそう。
バーとしての営業は水〜日。金土日はランチも提供。
ビル1棟を借りていて、1階は飲食店、2〜3階がイベント&ミーティングスペース、4〜5階がオフィス。
イベントが目当ての人はもちろん、ふらっとやってくる近所の常連さんも多い。

「働き方改革」ではなく「つながる」がキーワード。

日本仕事百貨、しごとバーを通して、仕事や働くということを考え続けてきたナカムラさんに、今の時代が求めている働き方について聞いてみた。

「ちゃんと休みをとろうとか、リモートワークをしようという、いわゆる働き方改革は、以前から一定数あったし、とくに盛り上がっている感覚はなくて。最近、感じているのは、『つながる』仕事を求めている人が多いということ」

ものづくりを例にすると、中国の工場で大量生産するのではなく、日本でデザインして生産して、自分たちで販売までしたいという会社が増えている。これは垂直統合的な意味での「つながる」。

時間的にも、過去と未来が「つながって」いて、ただ売って終わりではなく、その後のことまで考える。場所的にも、近くでつくって顔の見える人に販売する。また、テクノロジーの発達によって、仕事の領域もつながってきていると感じるそう。

「僕らの会社も、社員は近くに住むことを推奨しています。ここ(清澄白河)は地方都市みたいな場所で、歩いていたら知り合いに会いまくるんです(笑)。通勤地獄もないし、雨が降ってきたら洗濯物を取り込みに帰れる。食べて飲めて、銭湯もあって……。衣食住と仕事が近くでつながっているのは、働く環境として好ましいですよね」

「薄まりそうだから、拠点の数は増やさない。やり続けたほうが楽しい」とナカムラさん。

ワークアズライフ=「生きるように働く」。

日本仕事百貨のサイトのコンセプトは、「生きるように働く人の仕事探し」。「生きる」というのは、基本オンオフのない時間の連続だとナカムラさんは話す。

「個人的には、仕事をするときも、そうじゃないときも、すべてが自分の時間になるのが理想ですね。やらされているというより、自分でやっている感覚。これまでの働き方って、オンオフで語られがち。ワークライフバランスという言葉だって、ワークとライフを分けていますよね。それよりも“ワークアズライフ”。生きるように働くほうが、僕はいい」

もちろん強制的に長時間働かせるのはよくないが、一方で、働きたいという人も世の中にはいる。自分の時間の使い方は、人それぞれだとナカムラさん。

「これまでの仕事は、役割分担があって、誰がやっても同じものがつくれるというのをよしとしていました。そうした整理区別されて、合理的だったものが揺り戻されている。今の時代は、ワークもライフも、人も時間も場所も、すべてを一つひとつつなぎ直している気がします」

information

リトルトーキョー

東京都江東区三好1-7-14

営業時間:
〈バー〉「今晩」水曜〜日曜 19:00-26:00
〈お昼〉「今日」金曜・土曜・日曜 12:00-15:00
〈しごとバー〉不定期開催
休業日:月曜・火曜
行き方:清澄白河駅「A3」出口を出て左へ。ローソンを通り越したら交差点を左に。銭湯・辰巳湯の目の前のビル。

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