面積の半分以上が大きなテーブルとソファが置かれた応接スペースになっているMarvelous Advisersのオフィス。マイケル・ジャクソンのシルエットが目を引くこの空間には、本格的なバーカウンターとキッチンがあり、クライアントや経営者仲間とのパーティなどが開かれているそう。M&Aのアドバイザリーという、食とは関係のない会社がオフィスにキッチンを設置した理由、そしてその効果とは。
株式会社 Marvelous Advisers
業種:M&Aアドバイザリー事業
創立年:2012年1月
入居時期:2016年3月
社員数:5名
Marvelous Advisersは、M&Aを行う際に必要なさまざまな業務やサービスを提供する会社だ。単に相手先を探して紹介するだけではなく、交渉はもちろん、買収監査や株価算定といった業務も行っている。
現在、日本の企業の95%は中小企業であり、社長の平均年齢は67歳。子どもが家業を継ぐことが減り、後継者がいないために会社を畳んでしまうケースも多い。同社の代表の土居さんは、「会社の持っている資産は、帳簿に載っているものだけではない」と話す。
「その会社が持つ技術やノウハウ、人脈など、会社が潰れてしまうとそれらすべてが消えてしまう。日本全体にとっても、もったいない話です。M&Aというと、『敵対的買収』とか『乗っ取り』というように、よくないイメージを持たれがちですが、事業を継承していくためにはとても重要。私たちはM&Aを通して社会貢献をしたいと考えています」
オフィス空間は、ワークスペースと応接スペースが引き戸で仕切れるようになっていて、キッチンやバーカウンターも完備。じゅうたんが敷かれた小上がりの応接は「クリエイティブスペース」と呼ばれている。ちなみに、マイケル・ジャクソンは「クリエイティブな人」の象徴として、ここに貼られているとか。
事業拡大に伴い、神宮前、浜松町を経てここに移ってきたが、ずっと探していたのは、キッチンがあるオフィスだったそう。
「もともと料理が好きで、みんながわいわい集える食堂のような空間をつくりたいと思っていたんです。実は私は、魚釣りが趣味で、毎週のように船に乗っています。たくさん釣れたときは、ここでさばいて豪華なランチをつくって(笑)」
せっかく食堂をつくるなら、お酒を飲むところも、ということでバーカウンターも設置。さらにビルの最上階のため、カウンターの奥には、休憩などができるテラスも。料理やお酒を振る舞ってお客さんをもてなすことも多く、なかには飲むことを前提に、遅めの時間帯にミーティングを設定する人もいるそう。
土居さんによれば、M&Aのアドバイザリーという業務の特性上、なかなか外で商談を行うことが難しいという。
「買い手側の会社を相手に仕事をすることが多いのですが、そこにはインサイダー情報が満載。ホテルのロビーで商談をして、万が一、話が漏れたりしたら大変なことになります。また売却を考えている会社の場合、従業員に話を聞かれるのもマズイ。お客さんに安心して話してもらえる環境づくりは必須だったんです」
遮音性のある会議室に、戸が閉められる応接室などがあることで、クライアントが訪れる頻度は、以前よりすいぶん増えたとか。また、彼らの本音を聞き出すためにも、この空間は大きな役割を果たしている。
「たとえば、心の中では『(会社が)高く売れるのが一番』と思っているのに、『経営理念が合う会社じゃないと売れない』というふうにおっしゃる方も多いんです(笑)。我々は一定期間内に成果を上げなくてはいけないので、信頼関係を築くのに時間をかけられない。会って1時間以内にまるで10年来の友人のような関係性を築くことを目標にしています」
クリエイティブスペースは小上がりになっていて、靴を脱がなければいけないというのも、リラックス感を増す要素のひとつ。おいしい料理とお酒、家のようにくつろげる空間が、スタッフやクライアントの気持ちをうまく解きほぐしてくれる。
「今後はオンラインで会社を売買できるサービスを開発するつもりなので、スタッフも増やす予定があります。ただ、しばらくはこのオフィスにいるつもりなので、クライアントはもちろん、社員にとっても居心地のいい空間をつくっていきたいですね。照明を変えて、床を張り替えて……いろいろと手を加えて」
しっかり料理ができるキッチンがあるオフィスは、世の中にまだまだ少ない。キッチンで料理をして社内のコミュニケーションを深めたり、カウンターでクライアントとお酒を飲みながら語ったり。ワークスペース以外の余白が、オフィスをもっと自由に、そして有意義なものにしてくれる。
このテナントが入居するビルの情報
Public in Office(東京都中央区日本橋小網町)