コンクリートむき出しの天井にアンティーク調のウッディなドア、シンプルなロッカーなど、無骨でジャンキーさが感じられるオフィス空間。ここに移る以前、UPWARDのオフィスは、みなとみらいのオフィスビルにあったという。環境がガラリと変わる中で見えてきた、働くうえで大事にしていきたいオフィスの要素とは?
Google MAPをはじめとして、今や私たちの生活に欠かせないものになった位置情報サービス。UPWARDは、そうした位置情報を活用したクラウドサービスを手がけるスタートアップだ。
CRM(顧客管理)やスケジュールサービスなどと連携して、相手先への訪問計画を立てたり、移動中に商談状況の変化を知らせたり。さまざまな面からフィールドセールス業務を効率化するツールを提供している。
このオフィスでは現在、営業やエンジニアをはじめ15名の社員が働く。「少し前のアメリカのスタートアップ企業をイメージして、オフィス空間をデザインしていきました」と話してくれたのは、代表取締役の金木竜介さん。
創業以来、同社はみなとみらいの高層ビルにオフィスを置いていたが、取引をしているクライアントやパートナー会社は、ほぼ都内。アポイントなどの効率化を図りたいこともあって、オフィスを移転することになった。
「探した条件としては、東京駅に近いことと、ビル全体に雰囲気があること。物件自体は古くてもいいので、リノベーションされているような“スタートアップ感”を求めていました」
立地はもちろんのこと、ここに決めた大きな理由は、天井が高い、倉庫っぽいといった、いわゆる普通のオフィスにはない雰囲気。気に入ったテイストを求めて、なんと30〜40件の物件を見たという。
「もともと、ストリーマーコーヒー(隣のザ・パークレックス小網町ビル1階に入居しているカフェ)に行ったことがあって、そのビルがカッコイイなと思っていたんです。そうしたら、こちらも同じコンセプトでリノベ―ションされると聞いて。すぐに内見を申し込んで、入居を決めました」
「もともとのテイストが気に入っていたので、手を加えた点としては、会議室スペースをつくったことと、キッチンを入れたくらい。それ以外は内装工事をほぼしていないので、コストを抑えつつ、自分たちがイメージする空間をつくっていけたのは魅力でしたね」
以前は、広いオフィスで営業は営業、開発は開発と分かれてしまって、一体感を感じづらかった。それがここでは、壁に開発のロードマップを貼ってみんなで状況を可視化できるようになったし、営業が大きい案件を受注したらみんなで喜べるようになったという。
「(モチベーションを上げるための)演出として意図的にやっている部分もあるんです(笑)。それでも、ワンフロアでみんなが情報共有できる意義は大きいと感じますね。今、エンジニアたちは週1回どこで働いてもOKにしていて、そうした働き方は増えていくでしょう。だからこそオフィスは作業場ではなく、情報やビジョンを共有する場としての役割のほうが大事。居心地もよくなければいけないし、リラックスできないオフィスはいらないと思います」
たとえば、オフィスにあるキッチンでは毎月締め会を行っていて、目標を達成したら、みんなで料理をつくり、おいしいワインを買ってきて乾杯して達成感を共有しているそう。
OAフロアやサーバールームなど、さまざまな機能を備えたオフィスビルから、ラフな空間へ。そうしたものがないことに不便さは感じないのだろうか。
「時代が変わったんだと思います。今はWiFiがあるので有線のケーブルもいらないし、データはクラウドに置けばいいのでサーバーも必要ない。いわゆるオフィスビルじゃなくても問題なく働けます。だからこそ、こういうちょっと面白い、ジャンクな空間を選んだっていうのもありますね。」
ネットがつながればどこでも仕事ができるようになった時代。だからこそ、どんなオフィスで働くのかということが重要なエッセンスになってくる、と金木さん。
「とくにスタートアップって、安定や保証なんてものはまったくなくて、未来にしかモチベーションを持ちづらい。だからこそ、新しい働き方や新規性のあるプロジェクトに参加しているという、ある種“ファッション性”みたいなものが重要でしょう」
たしかに、外資系企業を見ても、働く環境を魅力的にすることでロイヤリティが生まれるような演出をしているし、働く側にとっても、それが会社を選ぶうえで重要な要素になっている。
「今働いている社員たちは、こういう空間やテイストを好きでいてくれるメンバー。日本の企業はまだまだ画一的なオフィスが多いですが、そこで働きたいと思えるか、カッコイイと思えるかということが、生産性やモチベーションにも大きな影響を与えると思うんです」
このテナントが入居するビルの情報
Public in Office (東京都中央区日本橋小網町)