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新人スタッフ奮闘記 「今日から君はコミュニティマネージャーだ!」

連載「オフィスとつなぐ人」の第3回に訪れたのは、浅草橋のシェアオフィス「Under Construction」。これまでREWORKでお伝えしてきたUnder Constructionの空間デザインと制作過程に続き、今回は同オフィスでコミュニティマネージャーを務める中川未咲さんにお話をうかがった。

設計事務所オープン・エーの社員である中川さんは、オフィス運営の経験はゼロからスタートし、コミュニティの成長ともに自身も成長してきたという。そもそもコミュニティーマネージャーとはどんな仕事なのだろうか。日々の業務を振り返りながら、これまでの歩みについて語っていただいた。

株式会社オープン・エー コミュニティマネージャーの中川未咲さん

設計事務所がシェアオフィスを運営する時代!?

2016年12月、浅草橋の一角にある築古ビルのリノベーションにより誕生したシェアオフィス「Under Construction(以下、Un.C.)」は、空間デザインを手がけた設計事務所オープン・エーが運営を行なっている。この成熟した社会では、使い手が空間を作り出し、自ら運営までしていく時代がやってくるだろう。そんな思いから、設計事務所自らがシェアオフィスを運営することになった。運営経験ゼロでスタートしたUn.C.は、1人のスタッフを運営担当者として任命することから始まった。

「今日から君はコミュニティマネージャーだから、よろしく!」

入社2年目の中川未咲さんが抜擢された。

「コミュニティマネージャーってなんだろう?」

中川さんはその役割や仕事内容はわからないまま、業務がスタートした。

Un.C.は全42席あるシェアオフィスの約半数をオープン・エーの設計事務所が使い、残りの半数はひと席ごとに個人事業主や会社に貸し出している。オープン後しばらくは、入居者やスタッフから寄せられる困りごとの相談に対応する日々が続いた。契約手続きやパソコンの設定、キッチンの使い方、ゴミの捨て方まで、「とにかく分からないことがあったら、中川さんに聞いてみる」というのが早々に定着していった。“コミュニティマネージャー”という肩書きの意味を理解し始めたのは、オープンしてから1年が経過したころからだった。

キッチンカウンターではスナックのママのようにみんなの話に耳を傾けている。

新規入居者の最初の仲間に。人と人とのつなぎ目をつくる

オープン後1周年を前にして、入居者からオフィスについて日頃の思いを聞くワークショップを開催した。不平不満の声が上がるのではないか…と心配していたが、予想外に「Un.C.でこんなことをやってみたい」「もっといろいろ手伝いたい」という要望が多かったことに驚いたという。

ときにオープンスペースで講演会が始まったり、夕食にジンギスカンを焼き始める人がいたり、ドローンを飛ばしている人までいる。Un.C.には職種も世代もさまざまな人が入居しており、みんなが思い思いに空間を使いこなしている。入居する人々は、手厚いサービスを期待するのではなく、空間を自由に使えることに魅力を感じてUn.C.を選んでいるようだ。入居者同士が少しずつお互いの仕事や思考を許容し、共存するカルチャーがUn.C.の中で育ってきたのである。

「分からないことがあったら中川さんに」と気軽に相談できるコミュニティマネージャーが日々近くにいることで、トラブルを未然に防ぎ、入居者が安心して自由にオフィスを使える環境が出来上がってきたのかもしれない。そして、コミュニティの成長過程で求められる仕事が、結果的にコミュニティマネージャーとしての中川さんを成長させたとも言える。

約40席の固定席と共用部によって構成されるUn.C.。オープン・エーのほか、デザイン事務所、アパレル企業、編集者、漫画家など、多様な入居者が働いている。

現在、中川さんは「新しい風が吹き込むように心掛けています」と語る。コミュニティが安定し、カルチャーが出来上がると、新しく入ってくる人が疎外感を抱き、それはシェアオフィスとしても望ましくない。イベントや仕事仲間など常に新しい人が流れ込み、新鮮な情報が入ってくる環境を目指している。

そのために中川さんは、新規の入居者に積極的に声を掛け、その人の“最初の仲間”になるのだという。そして入居者同士の交流の場であるキッチンに誘導し、他の入居者とつながれるきっかけ作りをする。そうすることで、新規入居者は早くオフィスに馴染むことができ、コミュニティーは停滞することなく、いい循環が生まれる。

入居者に情報を伝える掲示板。キッチンの横に貼ることで、誰もが日常的にUn.C.で起こっていることを知ることができる。

フロアを超えて、ビル全体の縦のつながりに展開

Un.C.が入居するビルは、1フロアに1社ずつ入居し、全7フロアにIT系ベンチャーやディベロッパー、エンタテイメント運営会社など様々な業種が入居している。ビル全体にもUn.C.で培ったコミュニティマネジメントを展開し、月に1回各テナントをつなぐ情報共有の場の運営を試みている。

日々の悩み相談だったり、オフィスの使っていない空間を貸し借りしたり、他フロアを巻き込んだヨガイベントやバザーなど、共同でイベントを企画することもある。各社が目指す働きやすい環境作りを実現するため、コミュニティ作りを通じてサポートを行っている。

Un.C.シェアメンバーを中心に開催されたバザー。他のフロアの人も参加し、新たな交流のきっかけを生み出した。

入居者の思いを肯定的に受け止める役割

多様な人々が働くオフィスビルにて、各フロアやビル全体で育まれるコミュニティを運営していく。そんなコミュニティーマネージャーを務めあげる中川さんは、どんなところにやりがいを感じているのだろうか。

「入居者それぞれの思いや希望を、できるだけ肯定的に受け止めることが自分の役割なんです」と中川さんは言う。

中川さんのバックグラウンドを紐解くと、幼少期から現在まで続けているダンサーの経験がこの仕事にも影響していることがわかった。オフィス運営もダンスと同じ。人と調和し、グループでひとつのものを作り上げ、みんながより良いパフォーマンスができる方向へ導いていくことが自分に合っていると感じているそうだ。

自分はコミュニティのリーダーや主役ではない。“影からそっと支える存在”と自身の役割を位置づけていることが、Un.C.が活気ある居心地のいいシェアオフィスとなっている秘訣かもしれない。

次の目標は、Un.C.で培ってきたコミュニティマネジメントの経験を新たなシェアオフィスに展開していくことだ。人と場所が変われば、オフィス運営の手法も変わる。Un.C.で得たノウハウを新たな現場でどうアレンジしていくのか。中川さんの挑戦は続く。

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